水際喫茶室|お魚・エビに一喜一憂

レッドチェリー

学名の話

 2002年当時、あちこちで名前の話に触れることが多かったので、学名の話。
熱帯魚屋さんに行ったり、本を読んだりしてると、目にする機会は多いですよね。
普通は学名なんて誰がつけたのか、どうやって見るのか、知ってても知らなくても別に問題は無いと思います。が、知ってれば、調べ物をする時等ほんのちょっと便利かもしれません。
ちょっと硬いかもしれませんが、興味がある方はどうぞ。

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標準和名と学名

 普通私達は1種類の生き物に、様々な名前をつけて呼んでいます。
クルマエビを例に挙げてみましょう。
「クルマエビ」これが標準和名です。図鑑なんかに載ってる名前ですね。
Marsupenaeus japonicus」これが学名です。詳しくは後程。
たま〜に、学名と標準和名を混同している人がいます。横文字の方が学名です。日本産では、この2つの名前の他更に地方名が、熱帯魚の場合は流通名が加わります。中には、よく似た他の種とごちゃ混ぜに呼んでる場合もありますよね。(ちなみに地方名と言えば、ワタクシ大学に入るまで、地元で言う「アラカブ」が「カサゴ」の地方名であることを知りませんでした!!)

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誰が学名をつけてるのでしょう?

 分類学研究者がつけてます。論文として学会発表する時につけるんですが、実はこと細かい国際命名規約があり、それだけで国語辞典よりも薄いけど、それなりに分厚い本があるくらいです。しかも英語! 学名をつけようと思ったら、読まんといかんのですよ、それを!(注:今は植物のもの以外は和訳があるそうです) さらに、学名はラテン語もしくはラテン語化した言葉をつけるという規則があるので、ラテン語の辞書も紐解かにゃなりません。辛っ!(注:ギリシア語でもいいそうです)
まあ、国際規約にさえのっとっていれば、何をつけてもいいので、「にっぽにあ・にっぽん」(←鳥の「トキ」)とかでもOKなわけですよ。それでも、普通はその種の特徴等を現した言葉になっているのが研究者の良心かも。学名自体、生き物の種類を整理するために人間が勝手につけているものですし、その方がどの種類を指しているかわかりやすくていいですね。
学名をつけるには、それ以外にもそれはそれは大変な作業が待っているのですが、そのあたりはまた別の機会に・・・。
ちなみに、早く付けたもん勝ちです。

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学名の見方・基本編

 学名は「属名」と「種小名」で構成されています。
つまり、「○○属の××という種類ですよ」という意味ですね。
クルマエビでは、属名=「Marsupenaeus」、種小名=「japonicus」ってことになります。
ここまでが学名なんですが、たまに、この「属名」+「種小名」の後ろに、何やら大文字で始まる単語やら、数字やらがくっついてる時がありますが、あれは、その学名が最初に発表された論文の「著者」と「年号」です。
学会の論文等では、念のため一度はこの「論文の著者と年号」まで表記します。
カッコつきになってることもあって、これは「最初に発表された学名とは違うものに変わってます」というしるしです。カッコ内が元の論文の方(原著論文と言います)。
新しい著者も含めると、「属名 種小名 (原著者,年号) 新しい著者,年号」
と、いう具合になりますが、全部書くのは分類学に踏み込んだ内容の論文くらいでしょうね。

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学名の見方・プラスアルファがくっついてる時

 たまに「属や種として分けられないくらい近縁だけれども、やっぱりコレとは違うのよ」・・・みたいなのを考える必要がある場合に「亜属」やら「亜種」やらというのが登場しますが、このときはそれぞれ属名の後ろに亜属名が、種小名の後ろに亜種名がつきます。ただし、動物の場合は、亜属を()でくくって表示する決まりになっているそうです。
 更にいろいろ謎の略語がくっついてる時もあります。
熱帯魚やなんかでは、よく種小名のところが「sp.」(=species「種」)になってたりするのがおなじみですよね。コレはご存知の方も多いかと思いますが、未だ正式に学名がついてないやつです。
ただ、研究者の中では、作業中属まで同定し、種まで見極める必要が無かったり、時間が無くて後回しにしたりする場合、「○○属の中の種です」という意味で、標本のラベルをこの表記にしておくことがよくあります。そして、複数居たら複数形にして「spp.」。
あと、この業界で「sp.」より目にするのは、種小名の後ろにくっついている「var.」かもしれません。こちらは、=variety「変種」です。
観賞魚の場合は、鑑賞価値を上げるために人の手が加わり、その結果、自然界には普通居そうも無い色やら形の魚が沢山養殖されるようになりました。水草だって、改良品種が沢山ありますよね。そのために、自然界の生き物を扱っている場合よりも、この「var.」がでてくる頻度が高いわけです。
・・・が、調べてみて驚きました。
なんと正式な学名では、魚に「var.」は無いのです。
実は、前述の国際命名規約には、動物・植物・細菌の3つがあり、それぞれ表記法に微妙に違うところがあるそうなのです。魚の学名は国際動物命名規約に従うのですが、これに「var.」が無いのですね。植物の方は「var.」を認めているため、水草の場合はつけても差し支えなかろうと思うのですが、熱帯魚関係で、どうして「var.」がついてるのかは、謎のまま。
最も、正式なものではないようですが、この業界では付けた方が便利な気はします。
確かに、学術論文読む時は、言われてみれば、内容はvarietyに触れていても「var.」のついた学名を見たことはありませんでした。・・・まあ、私の読んだ本数なんてたかが知れているんですけども。

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表記法&読み方

 学名がイタリックなのは、もともと論文中で「これ学名よ」ってことを示すのに、他と違った字体(=イタリック)で表記しているからだそうで、もし全文がイタリックで印刷だったりしたら、学名の方を普通の字体で表記するんだそうです。時々イタリックではなくてアンダーラインがついてることもありますが、あれは、「ここ本当は字体が違うのよ」というしるしなんだそうです。要はイタリックでなくともいいんですが、本文とは違う字体にしましょうということですね。
 読み方は、研究者によってもいろいろです。
上のクルマエビの旧学名は「Penaeus japonica」ですが、「ペネウス・ジャポニカ」と英語風に読む人も居れば、ラテン語読みっぽく「ぺねうす・やぽにか」と読む人が多かったりもしました。ちなみに、今までお会いした研究者の方で、「ぺなえうす」と、はっきり「ナ」を発音していらっしゃる方にはお会いした事がありません。何故だろうと思って調べたら、「ae」は、ラテン語の二重母音なので、一息に(一文字っぽく)「アエ」を言う事になっているようでした。熱帯魚で言うなら、いわゆる赤コリの学名Corydoras aeneusが、日本語で「アエネウス」と表記されていても、ラテン語の発音上は「エネウス」に近く聴こえるのではないかなと。(表記上「アエネウス」が間違っているわけではありません)
まあ、話が通じれば、スペルさえあってりゃいいのかもしれませんね。私達だって、日本語ナイズされたラテン語(英語)で話してますから。

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 以上、今回ちょっと硬めのお話でした。ボケたかったんですが、ネタが思いつきませんでした。残念。
残念なので、学名一発ネタ。なんとなく耳で聞くと気が抜ける学名↓。
「もらもら」・・・これ、お魚のマンボウです。(mola mola
・・・そ、それだけ。

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2002年5月公開、2002年6月改定、2003年3月追加、2010年5月再編

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