水際喫茶室|お魚・エビに一喜一憂

レッドチェリー

大卵少産と小卵多産

 アクアリウムの世界では、よく、「大卵型だから水槽で殖える」とか、「小卵型だから水槽で増やすのは難しい」とか言います。前者はビーシュリンプやミナミヌマエビ、後者はヤマトヌマエビが有名です。卵サイズはエビを殖やしたいと思っている愛好家には、結構重要なポイントですよね。と、いうわけで、卵サイズと数の生態学的意味のお話です。

 当たり前のことですが、もともと淡水エビの先祖は海で生まれました。海は小さなプランクトンが豊富で、卵が小さくて、幼生が小さくても、全然困らないくらい沢山の餌が手に入ります。そう言う意味では、卵1個1個に沢山の栄養をもたせる必要はありません。また、幼生の数が多ければ多いほど、その中の誰かが生き延びる率は上がります。そういうことで、海の中では、限られた卵巣物質を、卵1個を小さめにして数多くに分配する方法が主流になったようです。

 ところが、その後いざ海から河川に進出してみると、そこに待っていたのは餌になるプランクトン等の圧倒的な少なさです。淡水域は、海に比べるとあまりに栄養が少なく、小さな幼生に十分な餌がありません。そこで、淡水に進出したエビの一部は、幼生時代を餌が十分な海や河口で乗り切り、エビの形になったら改めて川に登る方法をとりました。これが小卵多産型と呼ばれるものです。淡水域と海水域を行き来するので、両側回遊型と言います。同じような意味で一生の一部を海で乗り切る生き物には、エビに限らずサケやアユ等、沢山います。

 淡水に入ったエビの一部は、卵1個1個に沢山の栄養を持たせ、親に近い形で孵化する方向に進みました。これなら卵の数は減りますが、小さくて敵が多い幼生の時代を親に抱かれた卵の中で安全にすごす事ができます。これが大卵少産型です。一般には、淡水で生活する為の適応が進んだ種類とも言えます。卵の数を少なくしても親と近い形で生まれる、と言う意味では、卵胎生のお魚も同じ戦略なのでしょう。

 こうして生まれた2タイプの繁殖戦略ですが、結局、どちらにも利点と欠点があります。

大卵少産型
利点:卵1個1個が沢山の栄養を持っているので、卵から稚エビまで育つ確率が高い。
欠点:親の近くで孵化するので、群としては分布が広げられにくい。→ 親の環境が悪くなった時に、子どもも一緒に死滅してしまう。
小卵多産型
利点:沢山の幼生が潮の流れによって分散するので、群れの分布を広げられる。→ 親の環境が悪くなっても別のところで生き残りやすい。
欠点:外敵が多く沢山の餌が必要な幼生時代をすごさねばならないため、多くは稚エビまで育てない。
 

 ちなみに、スジエビやテナガエビには、地方によって、卵径にかなりの違いがあるようです。同じ種類なのに、それぞれどんな大きさや発達段階で生まれるのか違ってたりして不思議な気がします。一方、従来ヌマエビには大卵型と小卵型があると考えられていたのですが、DNA解析の結果別種と考えるべきだそうです。まだまだ判らないことや研究中・論文発表が待たれる事が沢山ですが、面白いですね。

 ヤマトヌマエビ等小卵型淡水エビの生活史については、徳島大学環境マネジメント研究室(はまの研)のサイト」で見ることが出来ます。メニューの「水辺の小わざ」内、「川エビの生活と魚道」をご覧下さい。

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2003年?公開、2010年7月修正

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